STORY
ドラゴン退治のアンリータ
「ああ・・・、またドラゴン?」
アンリータはあくびをひとつして、チャイをすすった。あくびも、かったるそうなそのしぐさも、明らかにわざと。
(・・・このやろう)
宿の主人は、ココロのうちでいつものように五つの罵声をアンリータに浴びせ、それでいて表には満面の笑みを浮かべつついった。
「そうなんだよ、またなんだよなー」
主人は、アンリータの隣に座り、ピラリと依頼書を取り出した。
ここはあまたある世界のひとつ「透天」、とにかドラゴンが大量発生する世界。「ダンジョンひとつにドラゴン一匹」とは、冒険者の間で歌われている歌詞の一節だが、実はそんな生易しいものでもない。
あえて言うなら、「ダンジョンひとつにボスドラゴン一匹、取り巻きドラゴンいっぱい」といったところか。
当然、ダンジョンに入ろうという冒険者も少ない。アンリータのように、ドラゴンを専門で狩る冒険者は貴重この上ない。
といっても、何もアンリータが進んで人がやりたがらない仕事を引き受けているわけではない。ただ単に、ただ単に駆け出しのころ報酬の高さに飛びついて、たまたまうまく言ってそのまま惰性で続けているだけの話だ。
そのうちに、なぜか、いくつかの町では「英雄」とまで讃えられるまでになり、とりまきもできた。この宿の主人のように。
その腹の底は透けて見える、もうスケスケだ。だが宿の主人はそれを隠そうとはしないし、アンリータもそれを咎めようとはしない。
腹の探り合いなんてのは、アンリータに言わせれば「かったるい」。おとといきやがれといったところか。
悪魔放置
世界に悪魔が舞い降りた、当然人々はアンリータに期待した。
アンリータに言わせれば、誰も気づいていない「ネクロマンサー」と「アンゴルモア」の存在に気づいてしまったのが失敗だった。
期待が高まる中、あっさりとアンリータは引退した。
まだまだ、これから訪れる悪魔など知ったことではないようだった。
人々はうろたえ、パニックに陥った。そんな中その息子のシュラークが頭角を見せ始める。
人々は、今度はシュラークに期待を寄せ始める。
やはり、アンリータの息子だった。正直、うんざりしながらまず一体目の悪魔を倒した。
母親譲りの財産がたっぷりあるので、仕事はそんなにしなっかった、が、宝探しで入ったダンジョンにドラゴンがいると「プチッとつぶして」(本人談)報酬を受け取っていた。すると、「やはりアンリータの息子」と評価が高まるのだった。
続けて、悪魔を3体屠り、最後は大魔王。しかし、シュラークは大魔王のいる「デモンズゲート」に背を向ける。
正直に言えば、めんどくさくなったのだが、それは世の中でさまざまな憶測を呼んだ。
実はシュラークは前の悪魔との戦いで怪我を負い死んだというものから、図星のめんどくさくなったというもの、じつはアンリータ一族(といってもアンリータとシュラークだけだが)は大魔王と契約を結んでいる(だから悪魔も倒せた)というもの、アンリータ一族というもの自体が冒険者ギルドのでっち上げだというものまで。
実は世間が騒いでいるその間、シュラークは世の中を放浪しつつ、ダンジョンの宝物を集めまくっていただけなのだが。
結局、何年か後大魔王は去っていった。が、また懲りずに悪魔がやってきた。
一度倒した連中だ。
ため息をひとつ、シュラークは仕方なく悪魔を倒すことに決めた。
それに世の中が荒れると、街道にもいろいろ面倒なモンスターが出てくるので、それがうっとうしかった。 |